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 気付けば熱を持っていたのは握った拳で、綺麗に並んでいた机は大分乱れている。机によりかかる形で(みなと)が、辛うじて立っていた。  ジンジンと熱を持って痛い手と、机の状況で、はじめて、陸斗(りくと)は港を殴ったのだと自覚する。  でも、こればかりは。  復讐もなにも関係ない。ただ純粋にコイツが悪い。だって、こともあろうに、柚陽(ゆずひ)のアレを、「自作自演」だなんて。  港がバランスを崩したままの、不安定な体制なのも構わず、散らばった机を強引に足で動かしながら、陸斗は港との距離を詰めた。  衝動のままに港の首を鷲掴みにして、そのまま右手に力を込める。「ぐっ」なんて、汚らしい音が漏れたけれど、港を冷静にするには、まだ、全然足りない。 「今、なんつった? アンタの事、少しは同情してたんすよ。あの淫乱にトコトン騙されちまった、バカだけど、少しカワイソウな盲信者、って。でもいくらアレに心酔してるからって、言って良い事と悪い事があんの、分かるよね?」  ぐ、と、喉元を抑える親指に力を込めた。キモチワルイ声が漏れるだけで、返事はない。  「分かるよね?」と繰り返してみたら、睨まれた。なんで自分が睨まれなければならないだんろう。悪いことをしてるのは、とんでもないことをいったのは自分だって自覚が、コイツにはないんすか。 「テメェ、こそ……今までの、全部、本気で…いって、んの、かよ」  途切れ途切れに返ってきたのは、肯定でも否定でもない。まさか本気で分かっていないんだろうか。本気で、さっきの言葉を悪いと思っていないんだろうか。  ……有り得るっすね。  怒りから更に手へ力を込める。聞こえてくる声が小さくなったのは喜ばしいけど、口を封じるとはいえ、本気で殺してしまうつもりはない。陸斗は机が固まる方へと港を振り払って、首を掴んでいた手を離す。  鈍い音を立てて、港が、しりもちをつくのが、視界の端に映った。

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