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 ガラリ。  施錠していて、開くはずの無い扉が開いた。  と言っても、特別な申請とか許可が必要な教室じゃない。ただの自習室。外鍵だって生徒はある程度自由に使える。  別に他の誰から、なんて思われても気にならないけど、できれば(みなと)に対して不利になる言葉を2つ3つ、見知らぬ誰かさんに吹き込んでおこうか。つーか明らかにソーイウコトしてる体勢なんすから、気を利かせて出て行っても良さそうだけど。  そんな風に思いながら扉に目線を向けて、陸斗(りくと)は思わず、一瞬、固まった。  でも、これは却って好都合だったのかもしれない。  吐き気を感じながらも、陸斗は唇を釣り上げた。 「性欲を余していて、誰でも良いって言うならさ、オレの相手をシてくれないか?」  片手で、教師から借りてきたんだろう自習室の鍵を、手持ち無沙汰にいじりながら。  閉じた扉に背を預けて、海里(かいり)が笑っている。  両目とも、欲でランランと輝いていて、海里を心底恨んでいる陸斗じゃなければ、それだけで簡単に“その気”になっただろう。 「バッ、お前、海里! バカ、なんでここに来てんだよ。帰れ、って」 「はっ。港こそ、なに言ってんだ? 元はと言えばコイツ、オレが狙ってたんだし、横から手を出すなって」 「だから海里」 「人を飽きてポイしたクセに、よく言うっすねぇ。それとも自分の盲信者に取られるのは嫌だ、っていう、プライドっすか?」  港と海里の会話を聞いていても、陸斗にとって得はない。  それどころか、イライラが増して、不愉快になるばかりだ。2人の話は後にしてもらおうと、まだ何か言いたそうな港を遮って海里へと訊ねれば、海里は笑ったまま、首を横へ振った。  男が好きそうな笑い方だ。男好きがしそうな笑い方でもある。  海里が親から教わったんだろう。男の誘い方。あいにく、オレには気持ち悪いだけっすけど。でも、今は目的がある。  陸斗は自分の中の嫌悪感、気持ち悪さを懸命に振り払う。良いっすよ、オレも目的のために、アンタにノッてやるっす。

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