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「そんな大層な理由じゃねぇよ。ただ、誰でも良いから適当に引っ掛けたいだけ。1晩の相手に執着できるほど、相手に困ってるワケじゃねぇし」 「さっすが、親から淫乱になるよう育てられたクズは違うっすねぇ。アンタがされた事も一種の英才教育なのかな? とんだ英才教育っすけど」 「ははっ、確かに違いねぇな」  海里(かいり)は楽しそうに笑う。バカにしているのか、嫌味が通じないのか。  でも、そんな事、陸斗(りくと)にとってはどうでも良い。バカにしているのなら腹立たしいけど、嫌味が通じないようなバカだったところで、困るのは海里だし、海里が困れば陸斗としては嬉しいんだから。  バカにしているのならしているで、それだけ、復讐をキツくすれば良いだけ。 「だからさ、陸斗? (みなと)じゃなくてオレにシてよ。お前も、柚陽(ゆずひ)じゃないなら誰だって一緒だろ?」  ああ、でも、ソレは許せないっすね。一応はまだ、港を組み敷いて抑えつけた姿勢のままだから、睨むだけに留める。  本当は2、3発殴りたいけれど、どうせこれから、時間は沢山あるんだから。 「ゴミ以下の分際で、その名前を口にすんな」 「はっ、よっぽど大事にしてるんだな」 「当たり前っすよ。柚陽は、オレの大切で、大好きな人っす」 「まあ、良いや」  さすが、体だけを目当てにしてるから、想いの有無なんてどうでも良いんだろう。興味をなくした様に海里は素っ気なく、その話題を打ち切った。  ちらっと海里の目が床を、多分、港を見る。釣られた様に陸斗も港を見下ろせば、組み敷いた時でさえそこまで青ざめなかったのに、今はすっかり顔色が悪い。元からゾンビみたいに薄気味悪い肌色をした海里に匹敵するくらい青ざめて、ガタガタと震えているのが伝わってきていた。  そんな中でも「止めろ!」「止めろって、海里! もうお前が傷付く事はないだろ」「もう、もう諦めろよ」「オレは放っておいて良いから!!」なんて、うるさく叫んでいる。  本当うるさくて、耳をふさぎたいし、服を丸めて港の口に押し込んでやりたいけれど。  でも、いくら他人に興味がない陸斗でも、この反応から港が何を嫌がってるかは、明らかだった。  呆れるほどの盲信だとは思うけど、でも、事実がどうあれ、今この時に限っては、港がどう思ってるかが重要なのだ。

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