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自分が犯される事より、海里 が陸斗 と体を合わせる事を避けたいと思っているなら。
自分が犠牲になってでも、海里を陸斗から遠ざけたいと思っているのなら。
港 にとって最も効果的な復讐など、1つだろう。
多分それは、波流希 にとっても同じ事。
ごくり。陸斗は興奮から唾を飲み込んだ。もちろん、心の底から憎悪している相手とのセックスには、あいにく興奮できない。
いくら顔が整っていたって、無理なものは無理。なんなら、世間一般的に凄く整ってるらしい海里の顔が、この世の何よりも醜悪なものに映るほど。
でも、抱いた年月は浅くても、深く強い憎悪を抱いた相手に、遂に復讐を果たせる時が来たとしたら?
それも、ムカつく2人へ、同時に、効果的な復讐を出来るんだとしたら?
そして、その先に待っているのは、柚陽 との、なんの懸念もない、幸せな日常。
復讐の手段は、やっぱり吐き気がするほど気持ち悪いけれど。
それでも、興奮は覚えずにいられないだろう。
憎悪に燃えた目で陸斗は港を見下ろす。港はまだ、やかましく、海里に訴えかけていた。けれど、陸斗の目線に気が付いたのか、彼は唐突に矛先を変える。
「おい、お前、海里が嫌いなんだろ。だったら海里じゃなくてオレの方がマシだろーが」
よっぽどテンパってるのか、それとも頭が回らないのか。
陸斗は、にっこりと笑いかけてやった。とはいえ、目は相変わらず憎悪に満ちて笑えていなかったけど。
「嫌いっすよ。憎んでるっす。確かにアンタの方が数倍マシ」
「だったら!!」
「でもね」
組み敷いていた港を、やさしく起こして、乱した服を整える。さすがに他人のベルトをしてあげる事には躊躇ったから、放り投げたベルトを拾って、手渡すだけに留めた。
陸斗が突然取った真逆の行動に、港はぽかんとしてる。頭が追い付かないのか、この事態を受け入れたくないのか。
少なくなっている港達への同情心を努力で思い起こして、陸斗は精一杯、微笑んだ。
その甲斐あってか、今回は目も笑えていた。慈悲深い微笑み、ってヤツっすかね?
「オレはアンタにも復讐したいんだから、アンタが1番嫌がる事をしないと、意味ないでしょ?」
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