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アンタを潰して、

 海里(かいり)の腕を強く握って、自習室の奥へと連れて行く。入り口から部屋の半ばまで行けば、もう良いだろうと机の方に向かって、文字通り“投げ捨てた”。別に陸斗(りくと)は馬鹿力ってワケではないけど、海里は細いし、不健康的な体付きをしてるから、簡単に放れてしまうのだ。  ガシャン、なんて派手な音を立てて、海里の体がさっきの乱闘で散らばっている机の群れに転がった。また教室内が荒れたけど、別に良いか。あとで直せば良いし、なんなら荒らした罪を海里と波流希(はるき)あたりに負ってもらっても良い。しばらく学校に来なくなれば、オレとしても精神的にホッとできるしね。 「痛かった?」  「う」なんて、小さいうめき声が聞こえた。大嫌いな人間を殴る時、加減なんて出来ないワケで。それは憎んでいる人間を放り投げる時でも同じ。だから、何かにぶつかった時の衝撃もそれなりに大きかったと思う。  一応聞いてみるけど、もちろん、心配するつもりはナシ。なんつーか、社交辞令、的なアレっすかねぇ?  海里は小さく身じろいだ後、ちょっと体を起こして、陸斗へと腕を伸ばす。甘える様な、誘う様な仕草は、他の人間だったら、クラっと来たのかもしれないけど、憎んでいるこっちとしては、気持ち悪いだけ。  乱暴に振り払ったら、横倒しになった椅子の脚に手の甲が鈍い音を響かせて、ぶつかった。気持ち悪いくらい青白い肌をしてるから、赤というか、赤紫にヒリヒリとしてるのが目立つ。  ああ、痛いのに耐性がないなら、コーイウのもありかもしれねっすねぇ。  海里への復讐に、多少は良いだろかと思えるものを見付けて、にやり、自然と陸斗の口端が上がった。

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