抜き取ったベルトを放り投げずに近くに置いたのは、いざっていう時に縛るため。ぎちぎちに縛れば、普通のベルトでもそれなりに痛いだろう。そもそもベルトは本来人を縛るための物ではないし、本来の意図と違う使い方をすると結構アトが残って、痛いモノ。役に立つ可能性があるなら、放り捨てるのは惜しい。 　あえて遠くに放り投げれば、それなりに絶望感みたいなのは出せるかもしんないけど、そうなるとオレのベルト使わなきゃなんねぇし。コイツにオレの私物が触れるっていうのは、ガマンならないんすよねぇ。 　でも、下着の方はズボンと一緒に脱がせて、どっかに放り投げといた。 　要らないし、そのせいでコイツが何かに困ろうと、オレには関係ない。ざまあみろ、って感じっす。 　むしろ、裸のまま呆然と自習室に取り残されてるというのは、滑稽だし、世間的に見れば顔は良いから、明らかに行為後という状態、新しい男もドンドン釣れるだろう。遊び人の海里にとっては、この上ない幸せになってしまうかもしれないけど、散々抱き潰す事が出来れば恐怖に張り付いた顔を見せて、トラウマを植え付ける事が出来るかもしれない。 　そうすれば少しくらい、柚陽(ゆずひ)の気持ちだって分かるだろう。あんな風に襲っておいて、けろっとしてるなんて、信じられない。 　前戯なんて上等なモンは必要ない。だってこれは、恋人同士の甘い行為じゃないし、陸斗(りくと)が海里(かいり)を労わる必要などないから。 　それにアレだけ行為に浸かる海里であれば、男を簡単に、すんなりと受け入れてしまえるくらい、常にユルユルだろうし。