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「だからもう、変な気を起こしたりしないように、何ならお外を歩けないようにしてあげる」
陸斗 は、にっこりと笑った。
部屋の中は臭うし、どっちが出したか分からない欲で、床までぐちゃぐちゃ。環境としては本当に最悪ではあるが、上手く笑えたと自分でも思った。
だって、これでコイツへの復讐は終わる。完璧に。片手はもう、本当の幸せに手を伸ばしているし、その輪郭に触れているだろう。柚陽 と穏やかで、甘い、幸せな時間を過ごせる。そう思えば、劣悪な環境で海里 が相手でも、微笑みの1つや2つは浮かべられるってものだ。
行為中、撮った写真や映像は“そーいうトコ”に流してるし、復讐の下準備として用意しておいた連作先もある。ここの生徒もいれば、他校の生徒も、なんなら生徒じゃない人間だっていた。
その中でも海里をより、潰せそうなタイプを考える。やっぱり痛いのは嫌みたいだから、すぐに殴る蹴るするタイプ。暴力的な人間が良いだろうと連絡先をタップ。
「あー、この前言ってた丁度良いオナホっすけど、今大学の自習室に放置してるっすよー。オレ好みじゃないけど、割と世間的には良い顔じゃないっすか? うん、写真と自習室への地図は送ってくんで、どーぞ抱き潰して、殴りつくしちゃって」
「やっ……、りくと、それは」
そんな陸斗を見てか、さっきまで虚ろな目でぼんやりとしていた海里が、声こそ弱々しいけれど、呟いて手を伸ばす。まるで陸斗からケータイを奪おうとするように。
「コイツ反省してねぇ」。そんな強烈な怒りと、「オレの名前を気易く呼ぶな」といった吐き気を伴う怒りを感じて、陸斗は反射的に拳をみぞおちに入れ込んだ。「げふっ」なんてゴミに相応しい汚い声が漏れる。
「あー、気にしなくて良いっすよ。え? 声、聞こえてた? こんな声が良いなんて変わってるっすねぇ。どーぞ、犯すなり、殴るなり、好きにして。多分、コイツも、そっちのが喜ぶだろうし」
海里が止めに入ったのは、最初の電話だけだったけれど、似た様な電話を何人かにかけて、陸斗は自分のケータイを仕舞い込んだ。
最後の仕上げも準備できたし、あとは港 達に邪魔されないようにするだけっすかねぇ。改めて気を引き締めつつ、陸斗は海里を残して自習室の扉へと向かう。もちろん、興味はないから振り返ったりはしない。最後の最後で気が削げかけたけど、1番の復讐を達成した事に変わりはない。
ゴミに触れてしまったのは腹立たしいっすけど。
でも、陸斗の中でそうした事を含めてもテンションは上がりつつあって、扉の前に手を掛けた頃には、鼻歌さえ漏れていた。恋人同士の幸せを歌った、明るい歌のメロディーが。
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