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問題が1つあるとすれば、波流希 の事だろうか。港 の行動は抑えられたけれど、波流希は姿さえ見ていない。
もし本当に海里 にとって唯一信頼できたのが、波流希であるのなら。波流希には怯えない危険性がゼロではなくて。一応行為中に刷り込んでおいたっすけど、素人の洗脳まがいって効果、あるんすかねぇ?
昔から器用な方であったから、それを生かして、いくら遊び人の海里でもトラウマになるようなスイッチを、いくつか増やせたと自負しているが、波流希と海里の関係が盲信でもなんでもないのなら、少し不安要素は出てしまう。
同じ学校の生徒に声を掛けた時、念のため、波流希の姿があったら教えて欲しい、とは言ったけれど。
「さてさて、オレとしては最後の仕上げを邪魔されたくないし、ちょっと港くんの足止め、っすねぇ。お話する? それとも、一緒に遊ぶ?」
自習室から離れた空き教室に入って、陸斗は明るく笑って聞いた。不安はあっても、目的はほとんど果たせている。だから、そんな小さな不安要素で不機嫌になるほど、もう、陸斗は苛立ってもいなかった。
対して港の方は、陸斗を殺さんばかりの勢いで睨んでいるけど。
「お前、こんな事して満足か? 楽しいのかよ?」
「楽しくはないっすよ。ゴミに障るのとか、マジで萎えたし。でも、復讐が果たせて満足ではあるっすねぇ。これでオレと柚陽 には幸せな未来が待ってるんすから」
問題は1つ、波流希だけ。海里も、最悪“最後の仕上げ”が出来なくても良いだろう。動画と画像は、流れたらダメージになりそうなトコに送ったし、大丈夫。
海里が逃げ出す心配も、陸斗はしていなかった。足は横倒しになった机に挟まれていたし、手は近くにあった机の脚にベルトで括った。起き上がるために必要な個所は抑えているから、万全の状態でも起き上がるのは難しいだろう。
まして、あれだけの満身創痍なら尚更。
今頃1番最初に連絡したヤツが着いてる頃っすかねぇ。ふわっと、思わず微笑んだ陸斗に、
「それがお前の、幸せなのか?」
淡々と、無感情に。その言葉が、投げられた。
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