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何を当たり前の事を聞くのだと、思わず陸斗 は、きょとんと、目の前の港 を見つめる。
言葉自体は単純だけど、単純だからこそ意味が分からなかった。これが幸せと言わずして、なんと言うんだろう。
「そうっすよ? 憎い相手に復讐して、大好きな人と幸せになる。これ以外の幸せって、あるっすか?」
陸斗としては心底意味が分からなかったから、きょとんとしたまま港に訊ね返す。
似合わないのは分かっているし、それは陸斗のクセではないからやらないが、柚陽 であれば絶対に、こてん、と首を倒していただろう。
そんな陸斗と対照的に、港は、今までの激情が嘘であったかの様に、静かな、無表情をしていた。ただ何も感じていないというワケではないらしく、握った拳が震えている。
お話だと思ったっすけど、イイコトの方が良いんすかねぇ?やっぱり遊び人は伝染してしまうんだろうか。元凶を潰せたという理由が、陸斗を苛立たせず、冷静に考えさせる。だったら荒療治と、一応報復も兼ねて、相手をしてあげるべきだろうか?
復讐を終えてハイになってるらしい、そんな事まで考え出した陸斗の思考を遮る様に、港は小さく息を吐いた。拳ももう、緩んでいる。
「海里 は……海里は、こんな事の為に……」
港が呟いた言葉の意味は、やはり分からない。話も通じなければ、荒療治の必要もないのなら、もうこれ以上コイツ等に付き合う事もないっすね。
陸斗は判断して、港を残したまま、空き教室を後にする。開けられない様にバリケードを用意しておいて、団体客の1人に事が済んだら出してやってほしいと念のため頼んでおいた。
本来なら放っておいても良い相手なのだろうけれど。玄関に向かう足取りは、それこそスキップでもしてしまいそうなほど、軽く、弾んでいて、陸斗は誰にともなく、歌う様に言い訳を1つ。
「今のオレは、ケッコー気分が良いっすからね」
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