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「わ、ごめんね、りっくん! りっくんに鍵、開けさせちゃった」
それは、直後に聞こえた声で、簡単に復活したんだけど。
パタパタと、どこか慌てた様にリビングに入ってきた柚陽 は、陸斗 が戻ってくる前に帰ろうとしていたんだろう。陸斗に鍵を開けさせてしまったと落ち込んでいる事からも分かるし、服装も結構ラフだ。ちょっとコンビニに行く時のような格好。右手に持っている袋は、近所のコンビニの物じゃなかったけれど。
寂しさでしぼんだ幸せは、簡単に復活。それどころか、2倍にも3倍にもなっていて、自然、明るい笑顔で柚陽を迎える。
「おかえり。気にしなくて大丈夫っすよ。どっか行ってたんすか?」
確かに返ってきて柚陽がいなかったのは寂しいけれど、こうして柚陽を迎えられるのも嬉しいし。
それに、この幸せで特別な日には、いつまでも落ち込んでいるなんて、もったいない事できない。
笑顔のまま柚陽に問い掛ければ、「うん!」明るい肯定を返してから、手の中の袋を陸斗へと示した。
「スコーンなんだ。近所に美味しい焼き菓子のお店があって、りっくんとお茶用に買ってきたの」
「……あー、被っちゃったっすねぇ」
きらきらと目を輝かせる柚陽の前で言うのは、少しためらったから、あえて明るい調子で苦笑を浮かべながら、陸斗は頬を掻く。
こてん。最初言葉の意味が分からなかったのか柚陽は首を傾げて、それから目線を陸斗の手に移動させた。帰ってきてからすぐ冷蔵庫に入れたから、今、手元にケーキはない。だからなおさら、柚陽は首を傾げる。
可愛いけど、このままじゃ倒れちゃいそうっすね。本当に、首を傾げすぎて倒れてしまいかねない、ド天然で無邪気な柚陽に陸斗は微笑んで、ネタ晴らしをする事にした。
「冷蔵庫の中。ケーキ買ってきたんすよ」
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