134 / 538

「ケーキ! ありがとう、りっくん!!」  きらきらー。そんな効果音が付きそうなほど大きな目を輝かせ、笑顔を浮かべて礼を言う柚陽(ゆずひ)に「買ってきて良かったっすね」陸斗(りくと)は改めてそう思う。  恋人の可愛い顔を見られるのは嬉しいし、恋人が喜んでくれるのも嬉しい。どっちも叶うなんて万々歳だし、幸せのスタートに最適だろう。  ホールじゃなくてカットケーキにしたから、柚陽が買ってきたスコーンも、無駄にしてしまう事はないだろうし。 「じゃあ今日のデザートはケーキだね。スコーンは日保ちもするから、今度食べよう?」 「良いの? カットケーキ2個ずつだから食えない量じゃないっすよ。柚陽、スコーン食いたかったんじゃないの?」  まだまだ陸斗も柚陽も食べ盛り。流石に食後2人でホールケーキを、っていうのはキツくても、スコーンにカットケーキなら美味しく食べられる量だろう。  わざわざ買いに行ったって事は、柚陽がスコーンを食べたかったんだろうし。  そう思って聞けば、柚陽はブンブンと首を横に振った。食べたくて買ったワケじゃないんすか?柚陽の反応に意味が分からず、つい、うーんと考え込んでしまう。  そんな陸斗に柚陽は気が付いたんだろう。母が少し赤くなるのは、照れてる証拠。何に照れているかまでは分からなかったけど、それは柚陽自身がすぐに答えを口にした。 「スコーンも食べたいと思ったけど、甘いものが食べたくて。だからスコーンじゃなくても良いの。なにより、りっくんがケーキを買ってきてくれたなら、オレはケーキが食べたい」  少し照れくさそうに、ほっぺを赤くして。でも表情は花が咲いたように明るくて、きらきらとした笑顔。  純粋無垢で、可愛くて、きらきらしてる。買ってきた「幸せのケーキ」みたいっすね。陸斗は思う。それから衝動のまま、柚陽をぎゅっと抱きしめた。 「そっか。じゃあご飯の後、一緒にケーキを食べよう?」 「うん。あ、りっくん、今日はなにが食べたい?」  いつもの様に、こてん、と首を傾げて、陸斗に食べたいものを聞いてくれる柚陽。陸斗のリクエストは辛い料理や肉料理をメインに、細かいメニューについては、その日によって色々変わる。柚陽の料理は全部美味しくて、色々食べたいから、この時はいつも悩んでしまうのだ。  でも、今日は。

ともだちにシェアしよう!