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波乱の予感は同じ形で
何なら教室が騒がしい。今回の授業は柚陽 と別れてしまうから、陸斗 の表情筋は休業である。それでも、柚陽と幸せな毎日を送るにつれて、少しだけ柚陽がいなくても表情を変える様にはなっていた。
幸い、他人の噂話なんてすぐに収まって、今じゃ少しぎこちないけど、友人関係も元に戻りつつある。そこに海里 の姿はもうないし、友人の誰もが話そうとしない。
でも陸斗はもう、海里に対してなんとも思っていなかった。だから海里の事を話したいなら話せば良いと思うけど、まあ、彼等は彼等なりに危険を避けたり、陸斗に気を遣ったりしてくれてるんだろう。それはそれで、素直に受け取ることにしてた。
そんな、まだまだ完璧とは言えないけど、人との歩み寄りを覚えた陸斗はと言えば、教室の騒ぎに、少しだけ目線を向けはした。
まるで興味はなかったけど、まあ、社交辞令というか、その場の人間に合わせた感じ。
「……は?」
それをして、後悔する。でも後悔より先に、そんな間抜けな声が漏れてた。ワケが分からない。どうして。
大学の教室には、明らかに不似合いな小さな子供。大きな目。無邪気な笑顔。大好きな柚陽に似ているけど、陸斗には吐き気しか感じさせない子供が。
「陸!」
海里が、空斗 なんて呼んでた、ガキが、生徒達に囲まれて立っていた。
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