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「陸、パパとおつきあい、したんだよね? じゃあ、海ちゃんは? 海ちゃんは捨てちゃったの?」
空斗 はまた、似たような事を聞いた。ちょっとおかしくないっすか?陸斗 の中で違和感が大きくなってく。
パパ。空斗がそう呼ぶ人間を、陸斗は1人しか知らない。柚陽 だ。柚陽が体を重ねた女、空斗の母親の方に、新しい男がいたっていうなら少し話も変わってくるけど。
でもオレが付き合ってるのは間違いなく柚陽で、そもそもこのガキはソレを知ってるはず。
そう。柚陽が自分の子供にどこまで話したかは分からない。子供はそんなに好きじゃないみたいだから、全部話したかもしれないし、さすがにガキに話すのは躊躇って、必要なことしか言わなかったのかも。
でも何にしたって、このガキがあの日、玄関の前で陸斗たちを待っていた理由は、変わらない。「柚陽が陸斗と付き合うために、2人の仲を裂く」ためだ。
その目的くらいは、空斗だって知ってたはず。なら、「捨てた」って言い方は陸斗にとって正確でないにせよ、わざわざ聞くまでもなさそうなのに。
今更なに聞いてるんすか?
アンタはなにを知ってんの?なにを知らないの。
聞きたい事は意外と多くて、言葉が見付からない。
それでもなにか聞かなければと、半ば衝動に突き動かされながら、何を言うかなんて考えてないのに口を開く。
「空斗!!」
聞き慣れていた、でも最近は聞いてなかった。記憶よりも掠れていて、震えた声が、必死に空斗の名前を呼ぶ。
それで、かき消されてし、勢いも削がれた。
「か、い……り」
代わりに陸斗の口から漏れたのは、そんな、途切れ途切れの呟き。思えば久し振りにその名前を呼んだ。
2人の間のみならず、教室中が緊張に包まれる。そんな中で、やっぱりガキだ、空斗だけが嬉しそうに笑ってた。陸斗と海里を交互に見つめて、嬉しそうに。
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