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「……1つだけ、聞いても良いか?」  陸斗(りくと)を躊躇い気味に見つめて、ぽつり、海里(かいり)が小さく呟いた。  海里のクセ。  話し相手の目を見て話す。よっぽど照れていたら少しそらすけど。  だけど今みたく。避けるように目を伏せたまま、自分を視界になんて入れてないんじゃと思うくらいにあらぬ方向を見て呟く事なんて、1度だってなかった。  照れているなら少しは分かる。でも今照れるような要素はないし、気持ち悪いくらい青白い肌には、かすかな朱色さえ、さしちゃいない。 「なんすか?」  なにも感じていない相手のはずだった。実際、こうして顔を合わせるまで、なにも思う事はなかった。  もちろん、ずっと憎んでいたけど、復讐を果たしてからは気分が爽快。1ミリだって、海里のために気を悩ませはしなかったのに。  素っ気ない声になると思っていたのに、海里に返した声が、かすかに震えていると陸斗は自覚したし、それは柚陽や海里にも気付かれていたかもしれない。  「空斗(そらと)。良いから」なんて海里にやんわり制されて言葉は途中で止まったけど、「陸、やっぱり」なんて勢い込んで言ってきたから、多分、空斗にさえ。 「今、幸せか?」

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