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今、幸せか?

 幸せ。それは陸斗(りくと)が求めたものだ。柚陽(ゆずひ)と幸せになりたくて、本当の幸せを手に入れたくて。  だから、その邪魔をしてきそうな、盲信してる(みなと)達を潰したし、憎しみという形で心の中に居座った海里(かいり)への復讐を決めた。あの後どうなったかなんて、陸斗には分からない。分からないけど、陸斗が最後に見た姿だけでも、ひどく怯えていた。  あの時、机に潰された足には、包帯なんて巻かれていなかった。  思わず、柚陽と繋いでいない手を強く握りこんだ。爪が掌に食い込むけれど痛みなんて感じてなかったし、「りっくん!?」って驚く柚陽の声さえ、今の陸斗には届いていなかった。  絶対にこっちを見ようとしない海里を見つめる。伏せられた目からは、感情が読めない。  なんで。漏れた声は、もはや誤魔化せないほどに震えていた。 「なんで、アンタがそれ、聞くんすか。オレはアンタを憎んでた。だから、復讐した。それは反省も後悔もしてねぇけど、アンタはオレを恨んでも良いんすよ!? それとも幸せ、って言ったら、オレを潰すつもりなんすか?」  うぬぼれかもしれない。調子が良いかもしれない。けれど海里がそんな人間ではないだろう事を、陸斗は分かっていた。  反省も後悔もしてない。それは本当だけど、こんな事言うつもりじゃなかったのに。  コイツは。演技かもしんねーけど。親からの愛を正確に受け取れなかった歪みなのかもしれないけど。 「そうだな。復讐だって思うなら、コレがオレの復讐。今幸せか、教えてくれねぇか?」 「……幸せ、っすよ」  それは心からの本音だ。大好きな柚陽がいる。邪魔だと思っていた港達は潰せた。復讐を果たした事で海里への憎しみに心乱される事もない。  本当に幸せだ。  そして、海里という男は。 「そっか、良かった」  ──そう言って、笑えてしまえる人間なのだ。

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