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最近、柚陽 の帰りが遅い気がする。
1人きりのソファは、たいして大きなものじゃないのに、やけに大きく、だだっ広く感じられた。行儀が悪いけどソファの上に足を伸ばして、はみ出すのは承知で体を倒す。「あー!!」なんて、不満なのか、退屈なのか、何を訴えたいのか、自分自身も理解していない声を発して。
「どーしたんすかねぇ、柚陽」
柚陽お気に入りのクッションを抱きしめて、天井を睨みつける。もちろん、そんなところに柚陽の姿があるワケもなく。
枕元に放り投げたケータイは、さっきからずっと、なんのアクションも伝えてない。柚陽には連絡したけど、返信や折り返しの電話もなし。
事故に巻き込まれたのかもしれないとは一瞬思ったけど、それなら逆に連絡が入るはず。警察とか、病院とかから。でも一応念の為置いてある固定電話も、うんともすんとも言わなくて、留守電も入ってない。
理由も分からず連絡が付かないっていうのは、もやもやする。柚陽に限って浮気とかはないと思うのだけれど。
「でも一言、何があるかは知っておきたいっすねぇ」
そんな呟きが聞こえたのかどうか、ガチャリ、玄関扉が開いて、「ただいまー」といつもの様に明るい声が1つ。
安心感と胸の中に広がるモヤモヤ。「お帰り」それは、上手く言えていただろうか。
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