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「……どういうこと、っすか。大学のある日は一緒に帰ってもいる。それなのに、柚陽 は授業を受けてない、って?」
柚陽だけが取っている授業の事は、陸斗 には分からない。そこで何しているかなんて分からない。ただ、真面目に授業を受けているんだろうなぁ、としか思わなかった。
柚陽は可愛いから他の誰かに狙われたりしないか、不安になったりもしたっすけど。それでも、柚陽が授業を受けていない事なんて、思いもしなかった。時折、受けた授業の話やその時友人達が居眠りをしていたとか、ふざけていたとか、そういう他愛のない話も交わしていたのイに。
でも言われてみれば。
柚陽だけが取っている授業中の教室なんて、確認しようがない。もちろん、それを受けてる友人に聞けば良い話だけれど、陸斗にはそんな事を聞くという考えが無かった。だから柚陽の言葉を真実として、疑いもせずに聞いていたのだけれど。
なるほど、柚陽も陸斗が友人とそういった話をしないのは知っているから、嘘をついても気付かれないと踏んでも不思議はない。でも、だとしたら何で?なんであの、ド天然で、「言外の意」みたいな言葉とは程遠い、小さな子供のように純粋な柚陽が、そんな嘘をつくのだろう。
友人はといえば、てっきり柚陽と陸斗が授業時間も何も関係なく、イチャイチャに耽っていると思っていたんだろう。
陸斗の様子に「マズい事を言ってしまった」と大きく書かれた顔を、気まずそうに伏せたり、目を逸らしたり。時折頬や頭の後ろを掻いたりして、落ち着きない。
「……オレも聞きてーよ。つーか、悪い。お前が知ってると思ってた、っつーか、お前が知ってると思ってた、っつーか、もしイチャイチャし過ぎて出てないとか、出してないんなら、言っとくべきかなぁって言うか」
友人の方はすっかり覇気をなくしてしまってる。さっきの覇気はどこ行ったんすか。でもまあ、分からないではない。これは気まずい。それに、陸斗とて既にツッコむだけの余裕はなかった。
自然浮かんだのは苦笑。ゆるりと緩やかに、力なく首を横へ振った。
「いや、気にしなくて良いっすよ。つーか教えてくれてありがとう。ちょっとそれとなーく、柚陽に聞いてみるっすわ」
「おう。……でもさ、下手に言っちまったオレのせいかもしんないから、1つ言っといて良い?」
「? なんすか?」
「あんま、自分で追い込んだり、追い詰めたり。そーいうの、止めとけよ?」
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