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その日が来るまでの間は長かった気がするし、短かった気もする。柚陽 がいつも見せる明るい笑顔も、こてん、首を傾げる仕草も。いつものように「可愛い」「癒される」なんて思う反面、どこかで胸が締め付けられるような苦しさを感じて。心の中に生まれたモヤは、確かに広がっていった。
もしかしたら。本当にもしかしたら、あの明るく無邪気な笑顔の裏には、なにかがあるんじゃないかって。
柚陽は純粋で無邪気で、素直過ぎるド天然。
それは陸斗 もよく知っているし、柚陽の友人達も声を揃えて言っている。いわく「サギに引っ掛かりそうだ」「ハタチ越えてるとは思えない純粋さだ」などなど。
ただ、そうした反面で、空斗 の事を話す時、柚陽が誰も見た事がないような嫌悪感を見せるのも、空斗を自分の恋が実るために空斗を使ったのも事実なのだ。
もちろん、子供が嫌いな陸斗としては嫌いな人間を相手にする時、嫌な顔になるのも分かるし、そこまでして陸斗と付き合おうとしてくれたのは嬉しい。そこは変わっていない。変わっていないけど、でも、そうした1面がある以上、無邪気な笑顔の裏側を考えてしまうのは……仕方ないのか、オレが醜いのか。どっちっすかねぇ。
そんな悩みが自然と気分を重くさせる。どうするのが正解なのかは、まったく分からないんすけど、でも。
このままでモヤモヤしていたら、海里 の事を繰り返してしまいそうだ。幸せを続けたい。そのためなら。
最悪、あとで謝って、許してもらえなかった時はその時っすね。少なくとも、このままモンモンとしているよりは、良い結果になるんだって信じたい。
「じゃあ、行ってくるね。りっくん。今日のご飯はなににする?」
「行ってらっしゃい。あ、でも今日って柚陽が苦手な教授の授業じゃなかったっすか? オレが作っておこうか?」
「りっくんの手料理! 食べたいけど、でも、昨日も作ってもらったから、じゃあ、今日はりっくんに甘えてお料理買ってくるね。美味しそうなお店を見付けたの」
「ん、じゃあ楽しみにしてるっすね」
授業頑張ってね、と柚陽のふわふわした髪を撫でれば、柚陽が、ぱあっ、明るく微笑む。
柚陽を見送ってから、陸斗は深呼吸を1度。覚悟を決めて、自分の靴に足を突っ込んだ。
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