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それで崩れていくんすかね? なきがらを抱える手は、 | 夜煎炉の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それで崩れていくんすかね?
なきがらを抱える手は、
作者:
夜煎炉
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なきがらを抱える手は、
柚陽
(
ゆずひ
)
が戻ってきてしまったのか。背中を向けていても分かる扉が開く気配に、
陸斗
(
りくと
)
は身構えた。この場で柚陽に会ってしまうのは最悪だ。まだ動揺も抜けていない。けれど、今、自分が動じていてはいけないだろうと言い聞かせる。
海里
(
かいり
)
は、もはや扉が開くことが恐怖になっているのだろう。ひっ。引きつった悲鳴が喉からこぼれて、また、手足を動かそうとする。足は自由になったけれどひどい怪我で、拘束されていなくても自由に動かさないだろう。でもそんな事を考えてる余裕はなさそうだ。 薄暗い部屋に、廊下からの明かりが差し込む。薄闇に慣れた目には直視しなくても眩しく、伸びた影は無駄に恐怖を煽った。 だが、だから、何だ。 今、1番怖いのは海里じゃないか。オレが怯えていて、どうするんすか。守る資格がなくたって、相手が誰であったって、
港
(
みなと
)
達が来るまで海里を守る。独りよがりでも、それが今の自分にできることで、今の自分がしたいことだ。 覚悟を決めて振り返った陸斗の目に映ったのは、……幸い、運はそこまで陸斗を見放してはいなかったようだ。 あるいは、見放されなかったのは海里の方なのかもしれない。 「……っ、海里……、海里ぃ…」 張り詰めた顔が、ぐしゃぐしゃに歪んで涙を流しながら名前を呼ぶ港と、 「海里、オレのお家に帰ろうか。あったかい飲み物を一緒に飲もう?」 陸斗でさえ見慣れた穏やかな微笑みを浮かべる、でも目の端は明らかに赤くなっている
波流希
(
はるき
)
が、そこにいた。
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