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体調不良を装うために、ソファに横にこそなったけれど、眠気はやってこないし、眠られる状態でもない。いつ柚陽 が戻ってくるのか、戻ってきた瞬間どんな顔をしているのか。そういったのが怖くさえあって、眠っていられる状態なんかじゃない。
それに海里 の容態も気になる。それを教えてくれるだろう港 からの連絡はいまだになくて、心配になるけれど、不安なのは港達も一緒だろうし、同じ様な事をした立場の陸斗 じゃ、急かす資格なんてありはしない。連絡がないのは、特に報告しなければいけないような、大変なことは起こっていないと思うしかない、か。
友人には礼と、「ちょっとオレでも受け止めきれないんで、詳細はあとで良いっすか?」と送っておいた。
海里との関係性や自分がした事から、港達には確信がなくても、なんでも言っておかなくてはと思ったけれど、いくら柚陽の不審な行動を教えてくれた友人であっても、そう簡単に言える話じゃない。オレが臆病なだけかもしんないっすけど。苦笑を1つ浮かべて、ソファに落としたきりのケータイを無意味につついた。
そうして寝転んでいる内、玄関の扉が開いたのは、柚陽が本来帰る時間より少し遅い頃。ガサッ、とビニールが音を立てたのに一瞬ぎょっとしたけれど、「ただいまー」のあとに、ひょこっと顔を出した柚陽が持っている物を確認して、ほっとする。
買い物袋が2つ。帰りが少し遅かったのも、買い物に行っていたからなんだろう。……とはいえ、あの授業が終わった後からこの時間まで、どこでなにをしていたかは、分からないけど。
「りっくん、大丈夫? ちょっと風邪みたいって言ってたから、食べやすくて元気になれるものって思ったんだけど」
「ん、ありがと。そこまで重症じゃないっすけどねぇ。授業面倒だし、体調も本調子じゃないから休んじゃおう、っていう、セッコイ考えもあったっすから」
苦笑を浮かべながら、寝かしていた状態を起こす。照れくさそうに頬を掻いて、ちょっと気まずそうに目を伏せて。普段通りの自分のはずだ。少なくとも柚陽みたいなタイプに見抜かれるようなヘマはしていないはず。
果たして柚陽は、陸斗の言葉を信じてくれたのか。ふわっと、花が咲いた様に微笑んだ。明るくて、やわらかい笑顔。今までだったら、どんなに疲れていたって、簡単に疲れが吹き飛んで、「元気いっぱい!」って感じになったんだろうけど。
今は、やっぱり、モヤモヤが勝ってしまっていた。
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