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「ど、どうしよう、オレ、大変なこと、しちゃった……」
陸斗 の返事を聞いた柚陽 は、安心するどころかガタガタと体を震わせて、目に溜まった涙は、今にもこぼれそうになってる。陸斗に言っているのか、ひとりごとなのか、定かじゃない言葉をブツブツと震え声で口にして。
ああ、聞きたくない。そう思いながらも「どう、したんす、か?」聞いた陸斗の声も、どこか震えている。柚陽に悟られただろうか。
柚陽はガタガタ震えていて、しまいには自分の頭を両手で抱えて、その場に座り込んだ。やわらかい髪を、小さな手でガシガシと乱していく。
ガシガシ、ガリガリ、バリバリなんて、冷静さを失っているように。髪が乱れて、地肌に傷が付いても、いつか血が出てしまっても気にならない、気にしていられない、っていうみたいに。
「柚陽……」
そんな柚陽に、思わず手を伸ばす。まだ柚陽への恐怖心がなくなっているワケでもないけど、こんな状態の柚陽を放ってはおけなかった。
好きだった相手だ。大切にしたい、幸せにしたいと思った相手だ。方ってなんておけない。何より、海里 の時みたいな過ちを、もう繰り返したくはなくて。
でも、まだ陸斗の方に触れるだけの勇気はなかった。そのせいか。
それとも、柚陽の恐怖心のせいか。
「触らないで!!」
柚陽の叫びで陸斗の手は中途半端な位置で止まって、そのまま行き場をなくして落ちた。
叫んだ衝撃で涙がこぼれてしまったらしい。頬を濡らしながら、「ごめん、ごめんね」柚陽が呟く。
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