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柚陽(ゆずひ)、落ち着いて。なにがあったのか、聞かせてほしいっす」  座り込んでしまった柚陽に視線を合わせるように、陸斗(りくと)は膝を着いた。こんな柚陽を見てもまだ触れられない自分は、醜いだろうか。それとも、柚陽が「触らないで!」と叫んだことを言い訳にしているのか。  それでもなんとか微笑んで、柚陽にやさしく声を掛ける。本当にやさしい声になっているのか分からないけど、今の陸斗にできる、精一杯のやさしい声だ。 「ごめ、ごめんね、りっくん。オレ、まだりっくんが、海里(かいり)くんのこと好きだと思って、恨んでるのかな、とも思って。恨んでるなら、海里くんが傷付けば喜んでくれるかなぁって。好きなら、また、仲直りしちゃうのが怖く、て……」  堪えきれなくなった涙をこぼしながら訴える柚陽の言葉は、想像できてしまっていたけど。でも陸斗の脳を容赦なく揺らした。  海里の様子を思い出す。目に焼き付いている。  グロテスクになった足に、ぼろぼろの服に、自由をなくした手。虚ろになってる目。怯えていたのに、嫌がっていたのに、でも「シてほしい」「だから刺さないで」と必死で訴えた海里。  どんなメに遭ったのかなんて、想像もできないけど、「ひどい」なんて言い方じゃ言い表せないくらいのメに遭ったのは分かる。多分、“主犯”って言い方をするなら、それは、柚陽なんだろう。  それも、全部、陸斗のせいで。  陸斗が海里を好きかもしれないと思った不安で。  陸斗が海里を憎んでいるなら、喜んでくれるかもしれないっていう気持ちで。  ああ、やっぱオレが海里をあんなメに遭わせたんじゃないっすか。行き場のない感情に、ギリッと陸斗は自分の唇を噛み締めた。

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