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ベッドで眠る柚陽 は穏やかな顔をしていて、本当に、すやすや、といった感じで眠ってる。そうは言っても目元は腫れてるし、頬にはうっすらと涙の痕があって、手放しに「穏やかな寝顔」とは言えない。
あの後2人で家に帰って、風呂を済ませて、柚陽にはホットミルクを差し出した。子供だましとか気休めかもしれないけど、ないよりはマシっすよね、ということで。眠る前、いくら大学生といってもそれなりの夜だからと、砂糖は控えめで、でも甘口にした。辛い物が好きだけど、甘い物も好きな柚陽の好み。
まだ目を潤ませたまま、ふーふーと慎重に温度を伺って飲む、そんな柚陽の姿に胸は痛んだし、柚陽が落ち着くなら抱きしめたかったけど。情けない。この腕は震えて柚陽の方に伸びてはくれないし、罪悪感で重くなって持ち上がりもしない。
さすがに体を重ねる気にもなれなくて、でも寂しそうにする柚陽を放ってはおけなくて、陸斗 は「寝るまで傍にいるっすよ」と告げて、寝るまで柚陽を見つめていた、ということだ。
気休めのホットミルク効果か、よっぽど疲れていたのか。
それともオレが傍にいる事で少しは安心してくれてるんすかね。それなら多少の償いになるんだけど。
はあ。起こさないように気を付けつつ、堪えきれなかった溜息を漏らした。と、そんなタイミングでケータイが短い振動を告げる。びくっと反射的に驚いて、忘れていたけど、音を切ってポケットに入れていたのを思い出す。
そっと引っ張り出せば、画面が港 からの連絡を告げていた。待っていたはずの連絡も、全部真実を知ってからじゃ、憂鬱でしかない。罪悪感に胸が更にズキズキと痛む。息苦しさと心臓の痛みに、胸を抑えながら片手でメッセージを表示する。
海里 が1度目を開けて紅茶を飲んだ事と、なにか分かったかを問う内容だった。手がまた震えて、それでもなんとか「スンマセン。ごめん。謝っても謝りきれねぇっす」とだけ、送る。
すぐに読んだことを示すマーク。それから「どういうコトだよ?」「お前、何かしたの!?」「なあ」「何を知ったんだよ!!」そんなメッセージが立て続けに。
さすがに音を切っていても、振動音で起こしてしまいかねない。やっと、ぐっすり寝付けた柚陽を起こしたくはない。でも、真実を知ってしまいながら港からの連絡を無視できるほど、神経も太くない。ちょっと前までは、もっと太かったんすけどねぇ。良いのか悪いのかはともかく、苦笑を浮かべた。確かこれ、友人にも指摘されたっすわ。
痺れを切らしたのか、メッセージから電話に切り替わるけれど、陸斗は思わず切ってしまった。さすがにここで電話をするワケにはいかない。柚陽を起こしてしまいかねないし、起こさなくても「海里」の名前を出す事で悪夢を見せてしまいそうだ。柚陽だって、友人をあんなメに遭わせたくなかっただろうに。
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