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「……いやいや、お前、それ本気で信じたのかよ!?」
「ちょっと今は反論する元気もないっす。できれば柚陽 のこと、悪く言わないでくれないっすか、とだけ言っておくっすわ。さっきも言ったけど、柚陽は柚陽で不安に思ったみたいだし」
今までであれば喰って掛かったような言葉にも、反論するだけの気力が起きない。それでも柚陽だけが悪者と言われてしまうのは避けたくて、陸斗 は力なく呟いた。
そうは言っても、もしかしたら港 達は納得しない可能性も抱いていたけど。
なんせ、港達は海里 を溺愛しているし、すごく大切にしてる。理由はどうあれ、“ああした”のが柚陽であるのなら、「柚陽を許してやってくれ」と言って「はいそうですか」とはいかないだろう。
反射的に殴られても仕方ないし、むしろ殴って欲しいっすね。その程度で償いになるなんて、思えないけど。
そう思う陸斗に対して、港がしたことは、殴るでも、叫ぶでもなくて。
抑えきれない怒りをなんとかしようと、テーブルを叩くこともしないで。
ただただ、呆れた様な溜息を1つ、漏らした。
予想外の反応に、思わずぽかんとしてしまう。それとも、呆れて殴る気さえ起きない、ってヤツなんすかね。
許されたいなんて思っていないけれど、謝罪はしなくてはと頭を下げかけた。
「いや、だから待てって。お前の事許してもいないけど、今は責めてねぇよ」
ところを港に静止させられる。陸斗の頭を掴んで抑える、なんて、多少強引な手段だったけど。
抑える手に力は、意外と入っていない。怒りのあまり全力で挟まれても、文句は言わないっすけど。そんな陸斗の心情を読み取れないのか、無視しているのか。あくまでそっと頭を掴んだまま、港は、「いいか?」陸斗をまっすぐに見据えて、言い聞かせた。
「お前が柚陽を信じたいって言う気持ちは、分からないでもねーよ。好きなヤツは信じたいだろうし。でもさ、お前、柚陽が海里に襲われたっていう自作自演したの、忘れてないか? ……それと。お前の知ってる柚陽って、お前のために、とか、不安だったから、とか言ってコソコソ自分の友達に手をあげるタイプなの?」
結局疑ってるじゃねぇっすか。それはでも、言葉にならなかった。
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