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なんすか?言いかけて、言葉を止める。画面に表示されてるのはメモ帳機能の画面。そこに「海里 は少しずつ回復してる。すぐには無理だろうけど」「病院の住所は改めて送る」と記されていた事に、陸斗 は安堵と、驚きを抱いた。
海里が、仮に微々たるものでも回復しているのなら嬉しい。病院が必要なのは当たり前だし、特に問題なく病院に行けたというのも安心出来る要素だ。
けれど、最後の1文は分からない。なんでオレに病院の場所を教えるんすか?
「……場所聞いて、オレはどうすれば良いんすか」
なんすか?と訊ねる代わりに呟いた。「お前以外と頭悪いな!?」なんて失礼な事を言われたけど、これだけで何を求めてるか分かるヤツなんていないだろ。
ましてや、
「場所を教える理由なんて1つじゃねーか? 見舞いに来い、ってな」
「……オレが言える立場じゃねぇけど、アンタのがアホっすよ!?」
それだけは有り得ないと思っていた言葉を返されて、陸斗は思わず叫んでいた。ちらっと他の席の客から目線を向けられたが、気にしてる余裕はない。
港 は渋い顔をしてから、舌打ち1つ。「仕方ねーの」と切り出した。
「オレだって嫌だけど、アイツが喜ぶ事って言ったらお前の見舞い……つーか、お前の幸せな顔、だろ」
港の返答に、今度は陸斗が渋い顔を見せる番だった。
償いのために海里が喜ぶ事ならいくらでもしたい。でも、今の海里にとって、今、陸斗が幸せで過ごしているのが、喜ぶ事になるんだろうか。思わず考え込んでも、答えは見付からなかった。
「……まあ、努力はするっす。柚陽 の事もなんとか整理付けねぇと」
港が言うように、あの言い分は嘘なのか。嘘だとしたら、なんで嘘をついたのか。
きっとこれは、陸斗が向き合わなくてはいけない事だ。もう手の上に何が乗っているのか、分からなくなっても。
大切にしていたのが、実は幸せじゃなかったとしても。
喫茶店を出て自宅に向かいながら、陸斗は改めて、決意した。
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