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それで崩れていくんすかね? 12 | 夜煎炉の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それで崩れていくんすかね?
12
作者:
夜煎炉
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12
柚陽
(
ゆずひ
)
は、にこっ、花が咲いた様な笑顔をみせた。幼い顔立ちに見合った、可愛らしい無邪気な笑顔。明るく弾んだ声で。それは
陸斗
(
りくと
)
のよく知る柚陽であるのに、まるで見知らぬ誰かに見える。見知らぬ誰かにしか、見えない。 場にそぐあわない笑顔っていうのは、ケッコー怖いもん、なんすね。柚陽を直視する恐怖と、続く言葉への恐怖から、陸斗は現実逃避でもするようにぼんやりと考えた。 陸斗がどんな感情を抱いているかなんて、まるで気にした様子もなく。 さっきまで柚陽自身が語った言葉の異質さ、それだけの事を話しながらなお、無邪気に笑っていることへの奇妙さを、まるで感じていないみたいに。 花が咲いた様な、無邪気な笑顔のまま。えへへ、なんて愛らしい笑い声をあげながら。 「オレはね」 柚陽は、わざとらしく、大きく手を広げる。 それから自分の体を、ぎゅっと抱きしめた。強く、でも、やさしく。愛おしくて、大切なものを、その腕に抱えているように。 柚陽の大きな目が、熱に潤む。陸斗はこの目を知っていた。とろけたような柚陽の目。体を重ねた時に、ベッドの上で柚陽が見せる目だ。まっすぐに陸斗を見つめていたその目は、今、どこか遠くを見つめている。 そして、陸斗が知る目よりも、熱に、強く、激しく焦がれているように見えた。 「オレは、ずっと、ずーっと!! 海里が大好きなんだ!!」 柚陽と陸斗の他に誰もいない廃工場に、柚陽の熱を孕んだ叫びは、大きく響いて、少し埃っぽい空気の中に溶けた。
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