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でも、それにしたってやり過ぎだろ。あれは、好きな人間相手に出来るコトじゃない。さっき柚陽 が語った事だって、憎い相手に復讐としてスるならともかく、好きな相手への愛情表現にはなりえないだろう。
好きなら、もっと。
浮かぶのは、港 や波流希 の姿だ。海里 を大切に想って、海里を絶対に守って、海里の幸せを考えていて。
拳が震えるのを自覚した。それが恐怖によるものなのか、怒りによるものなのかまでは、分からないけど。
「ほら! 好きな子には意地悪したいーっていうの、りっくんでも聞いた事あるでしょ? オレはそんな感じなんだよ」
「……意地悪の限度を超えてると思うっすけど」
「でもでもぉ、それって、小学生のガキにも言えるよね? 本人は好きな子への“イジワル”のつもりで、ちょっと髪を引っ張っただけかもしれないけど、された側はイジメだぁ、とか、暴力だぁとか、騒ぎ立てるかも! だからオレのコレは、おんなじだよ。好きな子に意地悪するのと一緒」
そんな陸斗 の様子に気付いていないのか、陸斗の心情なんてどうでもいいのか。
はたまた、陸斗が怒りと恐怖に震えていると知ってか。
今までと変わらない無邪気な笑顔。今までと変わらない明るい声で、柚陽は言葉を続けた。
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