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「……今、柚陽 、海里 のこと、海ちゃんって」
浮かんだのは、空斗 の顔。海里を「海ちゃん」と呼んでいた、柚陽の子供。
なんとなく、同じ呼び方だからかもしれないけど、響きが同じような気がして。それで、ふと、同じような言葉を言いながら、どっか意味合いが違ったような気がした。
「陸、パパとおつきあい、したんだよね? じゃあ、海ちゃんは? 海ちゃんは捨てちゃったの?」
「オレはね、りっくんが大好きで、りっくんをオレのにしたかったから、アイツをけしかける事にしたんだよ」
ああ、そうだ。空斗は全部、知ってたから。だから、陸斗 に聞いたのだ。本当に良いのって。
柚陽は海里と陸斗を引き離したくて。陸斗が海里から離れたところを、狙ってたのに、思い通りになって良いの、って。
もっと早く気が付けば良かったかもしれない。でも、あの時点で陸斗は柚陽の思い通りに海里を恨んでしまっていたんだ。
自業自得じゃないっすか。浮かべた苦笑は情けなく歪んだ。
「うん、小っちゃい頃はそう呼んでたんだー。でも、ほんと、りっくんと海里が潰れるまで、あのガキがボロを出さなくて良かったよ」
それで柚陽には十分だったんだろう。にっこり、なんて可愛らしく笑って、柚陽は言う。
ああ、つまり。柚陽の言葉も、全部嘘だったんすか。最初から。オレが好きな人を幸せにしたくて、そのためなら何だってするって知っていたから。
柚陽が笑顔でオレの手に乗せてくれたのは、幸せじゃなかったんだと、自分の手で無惨に幸せを砕いたんだと、陸斗は痛感して。自分の手を、強く、強く、握り込んだ。
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