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 陸斗(りくと)の苦し紛れに柚陽(ゆずひ)は、きょとん、大きな目を見開いた。それが演技なのか、素なのかは分からない。分からないけど、親指は投稿ボタンに近付けたまま、離れない。ほんの些細な刺激でもあれば簡単に投稿されてしまいそうな距離のまま。  唐突に「えへへー」柚陽は明るく笑う。えっへん!なんてわざとらしく胸を反らしてみせた。 「簡単だよー? 海里(かいり)との付き合いが短くないってコトは、海里がベッタリの(みなと)と先輩とも同じくらいの付き合いなんだよね。港達がなにを考えてるかなんて、それなりに分かるんだ。どんなにりっくんのことを怒っていても、海里がそれを望んでるなら、りっくんには海里の場所を教えるんだろうなぁって」  図星だ。  だけど表情に出すワケにはいかない。ポーカーフェイスを貫けていたと思う。  しかし、それも、柚陽の言葉で無意味になった。  にっこりと笑う様子は、まるで天使。子供のような見た目もあって、誰もがそう言うだろう。けれど今の柚陽は天使じゃない。むしろ、その逆。 「でも、もしりっくんが本当に知らなくても、関係ないよー。理由はどうあれ、オレに教えてくれない事に変わりはないもん。この投稿ボタンを、ぽん! ってしちゃうだけ」  悪魔のように、そう言い放った。

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