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ごめんね。ほんと、ごめん。誰に対してなのか、何に対してなのか。ぼんやりとしたまま、陸斗 は内心で謝罪する。
届くはずがない。届いたところで陸斗の自己満足に過ぎない謝罪だ。謝ってどうにかなる事じゃない。でも、謝罪せずにはいられなかった。たとえ自己満足に過ぎなくたって。
港 になのか。波流希 になのか。海里 になのか。多分、全員にだ。本当に謝っても謝りきれない。
「とりあえず指、投稿ボタンから離してもらえないっすか? なんかの弾みで投稿された、なんて笑えないし」
「えー! でも良いや。離してあげる。そう言って騙したら、もぉっと凄いの、出しちゃうけど」
元よりそれは狙っていない。ここで隙をついてケータイを奪えたって、どこかに隠し持ってるパソコンにデータを保存していると思った方が良いだろうし、騙すような真似をしたら状況がひどくなるだろうことは、柚陽本人が口にする前からうっすら想像は付いていた。
「海里は病院にいるっす」
切り出して、震えた声で伝えた病院名に、柚陽は、ぱあっ、なんて花が咲いた笑顔を1つ。
柚陽はケータイを操作して、「はい」ととりあえずは、動画を消した様子を見せた。……パソコンの方にもきっと残ってるだろうし、そっちまで消してくれるとは思えないっすけど。
柚陽はぱたぱたと出入り口の方、陸斗の方に近付いて、1度、陸斗の目の前で足を止める。顔には笑顔を浮かべたまま。「ありがと!!」なんて弾んだ声で礼を告げて。
「大好きだよー、りっくん!!」
付け加えられた言葉は、甘ったるくて、子供っぽくて。あの時、陸斗が幸せだと思っていた時間の中で、散々聞いていたような声音。くらりとする陸斗を気にもせず、柚陽は背伸びして陸斗の唇に触れるだけのキスを1つ。
そしてぱたぱたとご機嫌な足取りで、おそらくはさっき陸斗から聞いた病院まで、駆け出して行った。
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