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 ガシガシと(みなと)の手が自分の髪を掻く。乱れることなんてまるで気にしていないらしい。時折「あー」なんて意味を成さないような、感情の乱れから来たようなうめき声が漏れていた。  くそ、伝えるためと言うよりは、さっきのうめき声動揺、思わず漏れたというような呟きを1つ。 「アイツはほんと、どこまで……。つーか、マジで先輩に任せて良かったかも。オレじゃ上手く対応できた自信がねぇわ」  目には怒りを宿したまま、けれと力なく港は呟く。  どこまでって、過去に似たような事はあったのかとか、気になる点はいくつか出たけれど、今聞くべきはそれじゃない。  港曰く、「波流希(はるき)なら大丈夫」そうではあるけど、かと言って悠長に構えていられる状態じゃない。それにきっと波流希だって万能じゃないから。あの時、波流希と向き合った日、彼の感情に“悪意を持って”触れた陸斗(りくと)としては身に染みている。  むしろ、「唯一心を許せる相手」である分、柚陽の言葉をまともに聞かせてはいけない気もする。 「ほんとは会わせないのが1番っすよね。でもあんな動画が投稿されたらヤバいし、柚陽はあくまで、海里を飼おうとしてるみたいで」 「ほんと、日に日に暴走してくな、あのヤロー……。つーか、他に柚陽から聞いた話があったら、教えてくれねぇか?」 「ん。分かったっす。まあ、オレが言うのもなんだけど、胸クソ悪い話になるっすけど」  陸斗自身、笑いながら語られた“あの話”を自分の口に出すというのは、正直嫌だ。おぞましい。  けれどそんな事も言っていられないだろう。陸斗はすぐに襲われるだろう吐き気に耐える様に、自分の手を強く、強く、握り込んだ。

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