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問い掛けつつも、陸斗 の答えなんてどうでも良いんだろう。柚陽 は答えを待つ事も反応を見る事もせずに、「はあ」なんて、わざとらしい溜息を1つ。それから、おまけと言うように、やれやれなんて肩を竦めてみせて。
「もう! それだとしたら、空気読んでよね!! アレだけのお話をしたあとで、居場所だけ聞いて誰が満足すると思うの? ゴテーネーにしっかり先輩に守らせちゃってさぁ」
さっきからまともな機能を失って、ちょくちょく「バグる」陸斗の頭が、「ああ、やっぱ言外の意をくめないっていうのは演技だったんすねぇ」なんて、ズレたことを考える。
もちろん、陸斗は柚陽の言外の意をくみ取った。そうした上で、“あえて”空気を読まなかった。
当たり前だ。仮にも海里 を守りたいからした決断なのだ。最低だったけれど。「あの場では最善だった」なんて言い訳は浮かんですらいないけれど。でも、海里を守りたくて下した、それこそ「苦渋の選択」だったから。
そこで柚陽の思い通りにするワケがない。
「でもまあ、仕方ないのかなぁ。うっかり、りっくんを許しちゃったオレが悪いって言われたら、反論できないし。うーん……。でもでも、それを仕方なかった、って言えるほど、オレの恋心は軽くも短くもないからさぁ」
「えーっとぉ」なんてわざとらしく言いながら、柚陽の手が自分のポケットを探る。十分予測出来てしまった事態で、だからこそ自分の震える足を叱責していたのに。
いざ柚陽の動作を見れば、情けない事に心臓が凍えていく感覚に襲われた。口が渇いて、酸素が足りなくて。開いた口からは求めてもいないナニカが入り込んでくる。
「やることは、やらせてもらったよー」
にっこり笑って、柚陽は、親しげに陸斗たちの席へと歩み寄る。まるで友達を見付けたかのような気易さで。
そして、コトン、なんてわざとらしく音を立てて、ケータイをテーブルに置いた。
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