259 / 538

11

 柚陽(ゆずひ)が大げさなほどに体を跳ねさせた。実際、その反応をしてもおかしくないくらいには、机は大きな音を立てていただろう。でも柚陽については、陸斗(りくと)、あるいは(みなと)なら、あの反応をして当然だと思っていたはずだ。  だから、ここまで大げさに反応するのは演技だろう。  柚陽は、バレていても気にしない、とでも言うように、ぷくっ、また頬を膨らませた。腕を組んで、ほんの少し胸をそらしている。少し自分を威圧的に見せようとしているように。 「もう! いくらロビーだって言っても、病院ではお静かに、だよ!! りっくんも港も、机をバンバン叩いて……め!」 「誰がそうさせてんだよ、誰が」 「へ?」  きょとーん。  じっと目を見開いて、こてん、首を傾げた。「港が何を言ってるか分からない」って言うように、港をじっと眺めている。  港のこめかみに青筋が浮かぶ、とでも言うんだろうか。明らかな怒りが放たれてる。でも、やっぱり、柚陽はそれだけじゃ動じない。  倒していた首を元の角度に戻して、2度3度わざとらしくキョロキョロ。自分の人差し指でいまだ、きょとーんとしたままの自分を示して、「……もしかしてオレ?」なんて首を傾げた。  そんなあからさまな態度に、港が何か叫ぼうとするより早く、「だぁってさー」なんて言葉を続けた。 「りっくんや港が悪いんだよ? 海里(かいり)に会わせてくんないから」  陸斗たちの怒りなんて気にも留めずに、飄々と口にする。  「それでね、それでね」柚陽は弾んだ声で言葉を続ける。さも妙案を思いついた!と言わんばかりに、手を、ポン、なんて打ってみせて。

ともだちにシェアしよう!