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オレは、柚陽が好きだから、柚陽と つきあいたいし、柚陽がしてくれることなら、なんでも嬉しいです。
なんて、普段より平仮名が目立って、いつもは綺麗な文字を書くのに、どこか崩れていて。
それでも確かに、今まで海里 の文字を見てきた人間には、ソレと分かってしまう。
ぐしゃり。紙を潰す音がかすかに聞こえた。耐えきれなくなったのか、波流希 の手にはグシャグシャになった件の紙が随分と小さくなって握られている。
「先輩!? もー、せっかく海里が書いたのに、なにすんのー?」
「書かせた、の間違いじゃないっすか?」
「もー、りっくんも失礼だよー? 海里が自主的に書いてくれたんだから。……証拠、見る?」
「見る?」と聞きながら誰の返事も待たずに柚陽 は自分のケータイを引っ張り出した。
自然、陸斗 と港 の顔が歪む。……本当にきちんと守るとは思ってなかった、っすけど。そんな陸斗の内心は、よほど分かりやすく顔に出ていただろうか。柚陽の頬は2人からの無言の抗議に、ぶんぶんと首を横に振ってから頬を膨らませた。
「だってりっくん達、ぜーったぁい信じないと思ったんだもん! そのための証拠しか撮ってないよ。これはホントだもん」
その言い方だと今までが嘘みたいに聞こえるっすけど。でも事実嘘だったんすよね。怒りと僅かな呆れを湛えて、柚陽を睨む。柚陽はといえば、「りっくんまで怖いよぉー」なんてわざとらしく言いつつも、ケロッとケータイを操作してる。
「見たくないんすけど」
「もー、そんなこと言わないで! 折角撮ったんだし、オレだって嘘つき呼ばわりされるのはヤダもん! だから見てよ、りっくんも、港も、先輩も。ね?」
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