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 ぱっ、と、画面が映し出したのは陸斗(りくと)も知った姿。記憶よりはだいぶ痩せ細ってしまってるし、顔色は相変わらず最悪の一言なんだけど、マンションで姿を見た時は少しだけマシにも見えた。  でもそれは、あくまで肉付きの問題で。  青白い肌には、もう、何の跡なのか分からない赤や赤紫だらけ。  点滴を無理矢理に引き抜いたからだろう、腕には血が伝っていた。  髪は多少ほんの僅かとはいえ、以前のツヤを取り戻しつつあったけれど、頬にぺったりと貼り付いていている。汗なのか、それとも。やけに生々しい白い液体も沢山髪に散っていて、だけど映像の中の彼は、一切気にしてる様子も無い。  目は、虚ろで、とろんと正気を失っている。  でも。「海里(かいり)柚陽(ゆずひ)の声がした方を向いた目は、期待にきらめいていた。 「これ、海里が自主的に書いてくれたんだもんねー?」  かさり。紙が掠れる乾いた音が1つ。そっちを見つめた海里は、ふにゃり、微笑んだ。 「うん、そうだよー。オレは、ゆずひが好きだから」 「うん、じゃあさ」  証拠以外は撮っていないというのは本当のようで、映像はそこで唐突に途切れた。続きなんて見たくもなかったから助かる、けれど。  この先、また何かをしたのかと思うと、陸斗の内心は怒りに支配される。……もうこんな怒りなんて感じる事ない、って思ってたはずなんすけど。  自分が怒れる立場にない事は自覚しつつも、ぎろり、陸斗は柚陽を睨みつけた。

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