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自分の手で閉じた扉の前に立って、しばらく陸斗 はその場から去れなかった。
いくら扉が阻んでいると言っても、怯えている時は結構人の気配に敏感になるものだ。扉の外にいる陸斗に、海里 がまた怯えてしまわないとは、言いきれない。それでも根が生えた様に動こうとしない自分の足は、なんて役立たずなんだろう。「とっとと動けよ」自分の足に一喝しても、動いてはくれない。
ほんと、結構オレって浅ましいんすねぇ。笑うに笑えない。自分に呆れながら、そっと陸斗は扉に掌を添える。もちろん、音を立てないように、細心の注意を払って。
無機質な冷たい扉からは、なんの温度も伝えてくれない。
海里の手もなかなかに冷たいっすけど、やっぱ当然の事ながら扉が伝える冷たさは、無機質なだけ。海里の手とは全く違う。
なんで、海里の手が、これと同じくらい冷たいなんて思ったんすかねぇ。本当、オレってバカだ。
海里。小さく。本当に小さく呟いた。
多分これくらいの声量なら、聞こえないはず。ごめんね、海里。オレのワガママで。
そっと扉に手を触れたまま、陸斗は静かに呟いた。口に出来るはずもない。資格もない。それでも確かな本音を。
「ごめんね、海里。どうか、どうか幸せになってほしいっす」
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