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なんで海里 にあんな事をしたんだろう。なんで海里を信じられなかったんだろう。なんで海里を疑ってしまったんだろう。なんで家を飛び出したんだろう。
そんな子供みたいな後悔が、今どき子供でももっとマシな悔やみ方をするだろうってくらいに拙い後悔が、陸斗 の中に次々浮かんでいく。「浮かんでは消え」なんて言葉があるけど、陸斗の後悔は一方通行で。陸斗のキャパシティなんて気にせずに、どんどんどんどん、湧いて来るばかりだ。
胸が痛い。咄嗟に抑えていた手を強く握り込む。でも、当たり前っすけど、こんな痛み、たいしたことないんだ。有り触れた言葉だけど、「海里はもっと痛かった」んだ。
荒く、浅くなった息を必死で整えて、あまり言う事を聞いてくれない足を叱責し、どうにかこうにか陸斗は立ち上がる。まだふらふらしながら、それでも自分の部屋に向かうと、タンスに手を付いた。
変わらず置かれていた写真立ての中では、照れくさそうに微笑む柚陽を陸斗が抱きしめている。なにも知らずに、幸せそうに笑っている2人。この幸せをオレが壊したんだ。
「あれ?」
写真立ての近くに、見慣れない紙が、見覚えのある小物を文鎮代わりにして置かれていた。海里と一緒に旅行へ行って、よくお土産を買ってた。その内の1つだ。
丸太に腰掛けたリスとうさぎの小物。「ちょっとガキっぽいか?」なんて頬を赤らめながらも熱心に見つめていた海里は、今でも鮮明に描けるのに、触れられない。
その時は「海里、かわいいっすねぇ」くらいにしか思えなかったけど、もしかしたら海里は、子供の頃旅行に出かけて、こうしたありふれたお土産を買う事もなかったのかもしれない。そう思うと、「ちょっとガキっぽいか?」時折見せていたあの表情が、切ないものに変わってくる。
もっとちゃんと、想いを伝えれば良かった。
更に後悔を深めつつ、その紙をそっと手に取って、
「っ、」
息を飲み、やり場のない感情をぶつけるように、陸斗は食い破らんばかりの勢いで自分の唇を強く、強く噛み締めた。
家具に拳を打ち付けて、これ以上海里との居場所を、もうとっくに崩壊してしまった物であっても、壊してしまうのは、嫌だったから。
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