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キミのいない、毎日
「陸斗 、まだ漫喫暮らしなワケ?」
「まだ、って言うほどじゃないっすよ。今日で2週間目だし。たまにはカラオケとかも行ってるっす」
「オレんち泊まりにくれば?」
「好意はありがたく受け取っておくけど、オコトワリっす。アンタ恋人いんじゃん。気まずくなるのも、気を遣われるのもごめんなんすわ」
苦笑交じりに陸斗が返せば、今の今まで話をしていた友人は、目を「まんまる」にして陸斗を見つめた。口も「ぽかん」と開けられてて、ちょっとと言うか、だいぶマヌケだ。
そんな、絵に描いた様な「きょとんとした顔」のまま友人は手を伸ばして、陸斗の額へと触れた。熱すぎもしないし、冷たすぎもしない体温。誰を思い出すこともない、掌。
だから不意に触れられても、少し驚く程度で済んで、「突然なんすか?」とげとげしい言い方にならずに問い掛けられたと思う。
友人も「わりーわりー」なんて笑いながら手を引っ込めているから、不機嫌そうには見えていないはずだ。事実不機嫌じゃないしね。
「陸斗にしては珍しいコト言うから、熱でもあるのかと思ってよー。つか。アイツも言ってたけど、お前本当に変わったのな」
「まあ、少し意識してる面はあるっすけど。そんな誰からも言われるほど変わったっすか?」
「変わった変わった!! 顔だけ同じの、別人みたい!!」
友人が挙げた別の友人の名前……あの日、陸斗を異変に気付かせてくれた友人の名前に苦笑を浮かべつつ、陸斗は返す。
最近はその友人や目の前の友人以外にも、「変わった」と指摘される。少しだけ意識している面はあるけれど、誰からも言われるほど変わってる覚えもないんすけどねぇ。そうは思いながらも、陸斗はあえて、「ニヤリ」なんていたずらを企むように笑ってみせた。
「実はオレ、陸斗の双子の弟なんすよ」
「ほんと、そう言われた方がしっくり来るって!! 顔つきも変わったし」
顔つきも変わった。その言葉には、さすがにドキリとして、咄嗟に頬へと指先で触れていた。そんな浮かべる顔が変わった自覚はないんすけど。
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