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そんなに顔付きは変わっただろうか。それこそ、別人だって言っても納得されるくらいに? まあ、半分はあっちも冗談だったと思うっすけど。
それでも陸斗 としては気になってしまって、
「つーか、そんな変わったっすか? 別人って言う冗談、通っちゃう?」
あくまで軽いノリに聞こえるよう意識しながら、問い掛けた。
友人の方は言葉を探すように、「うーん」と呟きながら、目線を斜め上に向ける。
「まあ、別人って言っても、せいぜい双子が限定だけどなー。なんつーか、やさしそうになったって言うか、寂しげな雰囲気になった、って言うか。前みたく、“アンタ等に興味ねーんで”みたいな雰囲気は確実になくなったな」
「……ま、事実オレの興味の範疇って、すっげー狭ぇっすからねぇ」
友人の指摘がピッタリ過ぎて、思わず陸斗は小さく吹き出した。
そんな陸斗の反応は友人にとって意外だったみたいで、一瞬きょとーんとした。よくよく、ちょこっとオマヌケな顔を見せる子なんすねぇ。
「どうしたんすか? なんか珍しいモンでもあった?」
「……いんや。ただ、ホント変わったんだなぁって思っただけ。お前、今までならもっとキツイ返しをしただろーし」
「あはは、少し温厚になったかもしれねーっす。あ、マンションの件、よろしくね」
「おう、任せとけ!! ……でもマジで良いのか? 余計な世話かもしれないけどさ」
良いのか? これは適当なマンションがあったら情報が欲しい、と頼んだ時にも聞かれた。陸斗と海里 のアレコレは、正確性はともかく、友人のほとんどは知っていたから。
だから陸斗は、当然の疑問だろうとうんざりする事なく「良いんすよ」と微笑んだ。2度目の質問になる今も同じだ。
「うん、良いんす」
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