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今日の宿に決めていた漫喫の1室に陸斗 は少し大きめのバッグを床に落とすと、無意識に少し大きめの溜息を吐き出す。はあ、と1つ。それから床へと座り込んだ。
さっきの内見は、なかなか悪くなかったと思う。家賃も予算内だし、なにより1番重要である「海里 と会わない」っていうのは、きちんと満たされてる。人は移動するものだから、「絶対に」とは残念ながら言えないけど。でも、それを踏まえても「会わない」と言える距離だ。海里が好んでいたお店も近くにないしね。
「あそこは、なかなかに良かったっすねぇ。そろそろ本格的に決めないと」
あまり色々なところをウロウロしていたら、悪目立ちしかねない。なんせ大きな荷物を持ってウロウロ、いろんな漫喫やカラオケを転々、っすからねぇ。
不審者だと周囲から言われることにはなんとも思わないけど、下手に海里の耳に入るのは避けたいっすから。
はあ。どんな感情からかは分かりにくい溜息を1つ漏らして、もう2つ3つ候補を出しておこうかとケータイに手を伸ばしたところで、トントン、扉をノックする音が1つ。
友人達にはわざわざ今日泊まる漫喫を教えていないし、フードメニューの類は注文してない。いよいよマジで不審人物として通報されたっすか? 一瞬陸斗は考えるけど、いきなり警察っていうのは、おおげさにも思える。まあ、柚陽 あたりがなにかでっち上げた、っていうなら別っすけど。
一応は警戒しつつ、礼儀正しく、「はい?」扉の向こうに声を掛ければ、扉を見ているだけでも分かるほどの躊躇いのあと、ゆっくりと扉が開かれた。
「アンタ、なんで……」
部屋に、これまた遠慮がちに入ってきた人物に、驚いて言葉が途切れる。
「ここにいたんだな、陸斗」
気まずそうに、決して広くはない部屋のあちこちへ視線を巡らせながら、港 が、そう呟いた。
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