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「なんで……なんでアンタが、ここにいるんすか……?」
思わず問い掛けた声は、震えていた。
確かに意識していたのは「海里 に」会わない事で、港 と波流希 については、少し失念してた。
部屋探しの条件として波流希の家から遠いことも組み込んではいたけど、会いに来る可能性なんてまるきり考えてはいなかったから、友人たちに場所の口止めも頼んではいない。柚陽 に対しては頼むまでもなく気を利かせてくれていたけど、港についてはそうもいかなかったみたいだ。
もしかしたら、海里との1件で陸斗 に良くない感情を持っている誰かが、「港なら陸斗を殴るだろう」って期待を持って教えたのかもしれないけど。
別に港に殴られることは構わない。殴るなり、蹴るなり。その憎しみが少しでも軽くなるなら、受け入れるべきだって、痩せ我慢でもなんでもなく、陸斗は思ってる。でも、それにしたって、このタイミングは早過ぎないだろうか。
病室で起こった“あの”事件から、まだそんなに日数は経っていない。足のケガだって、精神状態だって、回復するような日数ではないはずだ。それなら、当然、まだ海里の傍にいるはずなのに。
そんな感情が混じり合った問い掛けは、正確に通じたんだろうか。
「海里とお前の家に戻った時、お前の荷物が減ってる気がした。悪ぃけど部屋も勝手に覗かせてもらったぜ。んで、お前が出て行ったのを確信して、探し回ってたんだよ」
取り敢えず言葉通りの答えだけが返ってきた。でも、それにしたっておかしい。なんで海里と暮らしていた家に、荷物がないからって、陸斗を探すんだろう。
復讐を果たすためなら、わざわざ荷物の有無を気にする必要もないのに。
多分、今の陸斗は「ワケが分からない」という内心を、はっきり顔に出していたんだと思う。ぽかんと、口を半開きにした間抜け面。
そんな陸斗を笑うでもなく、でも呆れたように、港は言った。
「……お前、結構バカだろ」
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