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「お前さ、この2週間くらい、1人で生活してたんだよな? どうだった?」
「どう、って言われても……。大学には行ってたし、完全に1人じゃないっすからねぇ」
予想もしていなかった角度からの質問に、思わず陸斗 は、そんな的外れな事を口にした。気付いたのは言ってからだったけど。
でも、さっき港 から聞かれたことにどう答えるのかで割と手一杯で、港が何を思ってそんな質問をしたのか、ちょっと探れそうにないっす。
今の陸斗が「ポンコツ」だと分かったんだろう。港はトンチンカンな返答だっただろうに、「ははっ、まあなぁ」なんて軽く笑った。
「陸斗が変わったって話、ケッコー流れてるからな。大学に行ってないオレ達の耳にも入ってくるし」
「……アンタ等大学はどうしてんの?」
質問に自分が答えていないのは自覚しつつ、陸斗は迷ってから、それを口にした。あの日以来、海里 の姿を全く見ていなかった。
大学で見た姿と言えば、足を引きずって空斗 と一緒に来た時、だけ。あの時でも海里は痛々しそうで。
自分で聞いておきながら悔しさや罪悪感に襲われて再度、唇を噛み締める。少し血の味がしたけど、気にもしないで。
「休学。海里は中退でも良いって言ってたけど、教授陣に引き止められてさ。取り敢えず、1年ずらそうか、って話になってる」
「……ごめん」
「ま、オレ達の事情はこんな感じ。で? お前はどうだったんだよ、この2週間」
陸斗の謝罪に対して港は何を言うでもなく、何事もなかったかのように同じ質問を繰り返した。
それに対しての答えなら、あるにはある。自分の図々しさや弱さに、我ながら呆れてしまうようなものだけど。
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