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「……寂しかった、っす」
どうにかこうにか絞り出した、「寂しかった」は、情けないくらいに震えていた。今にも泣き出しそうで、泣き叫ばなかったのが奇跡かもしれない。
ぐっと、陸斗 は拳を握りしめる。痛みを感じても更に強く。自分の爪で、自分の皮膚を抉るくらいには。
寂しかった。海里 と幸せになれないのだと痛感して、からっぽの部屋で1人座り込んでいた、あの時間。あの時間は陸斗に、寂しさを植え付けるに十分だったらしい。
だけど、もちろん、海里に対する感情は、ソレだけに留まらない。
してはいけない事をした。
壊してはいけないものを壊した。
それは、もし、この世の誰もが、港 と波流希 でさえ許してくれたとしても、消えて無くなることはないんだから。
「寂しかったし、自分が許せなかった。安っぽい言い方になるけど、後悔しかできなくて、そんな自分が嫌で。……はっ、自分でやっといて何言ってんだよ、って話、なんすけど」
はは。楽しくもないのに、喉から乾いた笑い声が漏れる。いよいよどっか、バグったんすかね?
港はそんな陸斗を見て、ぽん、と。まるで撫ででもするかのように、頭の上に手を置いた。
殴られるならまだ分かる。でも、そんなやさしい意図で置かれた手の意味は分からなくて、陸斗はますますの混乱に襲われた。
けれどあっさりと、混乱状態にした本人によって、陸斗はそこから引き上げられる。
「よく言えたなー。ちゃんと素直に言えるようになっただけ、上々だろ。……じゃ、帰るか」
「は? ど、どこ、に?」
「話の流れから分かるだろーが。海里とお前の家にだよ。海里が退院してくるまで、しっかり待っててやれ。罪悪感だの、資格がないだの思うなら、それが償いの1つだと思って、な」
「海里といい、アンタといい、お人好しが過ぎるっすよ」
弱々しい苦笑を浮かべつつ、陸斗は着替えなどを入れてある大きなバッグを肩に掛けた。
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