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「つーかアンタ、合鍵持ってたんすね」
部屋に入ったは良いものの、どうしたら良いかはわからない。ぽつん、と突っ立っていた陸斗 を港 が笑って、「お前の家でもあんだから、座れば良いだろ」と言ってきたことで、どうにかこうにかリビングのソファーに腰を下ろした。今まで散々座っていたのに落ち着かない。
部屋が静かになって、この部屋の「からっぽ」具合を痛感してしまうのも嫌だったから、何気なく港に問い掛ける。上がったと言っていたし、合鍵を持っていたんだろう。
港は海里 の親友。持っていても不思議はない。もちろん、波流希 については言わずもがな。
「妬いたか? それとも、怒った?」
「どっちも違うっす。ま、昔だったら怒ったかもしれねーけど、アンタ等見ててそう思えるほど、オレは図々しくねぇし、自惚れてもねぇっすわ」
きっと以前だったら怒ってた。恋人である自分に内緒で、他の人間に鍵を渡すなんてどういうつもりなんだろうって、確実に面白くなかった。
でも今は違う。あの2人を見て嫉妬なんて、できるはずがない。
全部壊して、全部失ってから気付くなんて、バカにもほどがあるっすけど。
全てを正直に答えた陸斗に、港は小さく苦笑した。「無い物ねだり、かもな」小さく呟いてから、陸斗に疑問を挟ませる余地は与えず、
「持ってねーよ」
否定した。
「さすがの海里もお前との家の合鍵はくれなかった。先輩に至っては海里の前じゃ物分かりの良いお兄ちゃん演じてたのに、オレと2人になったらそれなりに荒れてたぜ?」
「じゃあ、なんで、鍵持ってるんすか? ここに来たら、オレの荷物がなかった、って」
もしや、ハッタリだったんだろうか。そう考え出した陸斗に示された答えは、単純。
「海里に借りた」
言葉自体は単純だったけれど、その言葉は驚愕で陸斗の脳を派手に揺らした。
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