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幸せになれると思ってるの?
「……ただいま」
まだぎこちないけど、港 に連れられて「帰って」来た時よりは、少しだけスムーズに言えるようになった、と、自分では思う。それが良いのか悪いのかは、分からないっすけどね。
海里 も、港と波流希 も、揃いも揃ってやさしいから。本当にコレを償いと呼んで良いのか、時折陸斗 は不安になる。
どうしようもなく、辛いけど。
掃除をしたから埃っぽさは無くなったとはいえ、吸い込む空気は相変わらず肺を刺す冷たさだけど。
でも、もうとっくに無くしたと思っていた、自分の手で握り潰してこなごなにした、「海里と一緒にいる権利」を、自分がまた手にして良いのだろうか、と。
それでももし、本当に「それ」を許してもらえたなら。今度こそきちんと、海里を幸せにしたい。違う。
陸斗は首を振りながら、カバンを自分の部屋へと置く。決意を強くするために、あえて口に出す事にした。
「幸せにしたい、じゃダメっすね。幸せにするんだ」
叶うなら、もうとっくに無理だと思って諦めたけど、本当に夢物語でしかないけど、2人で。
でもそんな身の程知らずのことは望めないっす。オレは海里を幸せにする。それが償いだし、償いとか関係なしにオレのしたいこと、やっと見付けた、オレの本音っすから。
何度も繰り返していること。そして繰り返す度に決意を強める。
陸斗は小さく息を吐き出して、それからケータイを手に取った。
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