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あの日から港 は、海里 の体調を報告してくれている。
それを見るのに、「全然辛くない」なんて言ったら、嘘だ。痛いし、寒いし、罪悪感は容赦なく陸斗 を押し潰す。
だけど同時に、少しずつでも回復している様子が窺えるのは、安心出来た。
港と波流希 にはまるで怯えなくなったし、今では少しだけ波流希になら甘えるようになったらしい。波流希が港のケータイを使ったんだろう、「まだまだこの座は譲るつもり、ないから」なんて添えられた1文には思わず頬が緩んだ。良かった、と。
昔だったら嫉妬でケータイを投げつけていただろうけど、綺麗事でもなんでもなく、今の陸斗は安心していた。
マンションであれだけの目に遭いながらも、港と波流希を忘れなかった海里が、病室で2人に怯えたっていうのは、衝撃だったっすからね。
それに、やっぱり海里の傍に親友である港と心を許してる波流希は、必要なのだ。あんな悲しい思いは、もう沢山っすわ。
……だから。
港からの、罪悪感と安堵を同時に抱くようなメールを閉じて、陸斗は溜息と共に着信履歴をタップする。
ケータイを手に待って待機でもしていたのだろうか。3コール目を待たずに、
「やぁっと折り返してくれたー! もう! こんなに待たせるなんてダメだよー?」
明るくて無邪気な柚陽 の声が、陸斗の耳を容赦なく刺した。
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