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「まあ、りっくんの方から綺麗さっぱり恨みが消えても、海里 の方はわかんないけどねぇ」
散々陸斗 自身でも思っていた事だ。柚陽 がそう言ってくることだって予測していたし、事実、最初柚陽はソレを言っているのだと思っていた。だから言われたって、それこそ「今更」なはずなのに。
それでも改めて指摘されれば、情けない事に陸斗の胸は痛む。罪悪感に押しつぶされて、後悔に刺される。痛い。苦しい。だけど、海里はもっと痛かったんすよ!!
ケータイを改めて握り締めて、「ハナから承知っす」素っ気ない口調で柚陽に吐き捨てる。
「海里がオレを恨むって言うなら、受け入れる。その上で、海里が1番望む幸せをあげたい……違うっすね、海里に幸せを返したいんすわ。オレが奪っちゃったんだし」
「だめだぁ。りっくんの考えてること、オレには分かんないよぉ。でも、オレだって海里を諦めないんだからね!! 足だって歩けないくらいに潰して、オレの言葉にはなんでも聞いちゃう、従順なお人形サンにするんだぁ。誰にだって喜んで足開いて、甘えて誘ってさぁ。そんな感じ! 邪魔しないでねーって言っても無理だろうから、邪魔するならオレも手段を選ばない。港 たちにも伝えておいてねっ!」
悪びれもせず、楽しそうに語られる言葉に。弾んだ柚陽の声に、吐き気がする。
胃の中のもの全部、胃液さえも残さず、吐き出してしまいそうだ。思わず、堪えるように、口元を手で覆った。
「それと、りっくんは覚えておくと良いよ。被害者と加害者って、思った以上に相容れないものなんだからね。ちゃんと、きっちり、愛を持って壊さないと!」
弾んだ声でそう付け加えて、電話は切れた。あとは通話の終了を告げる、無機質な電子音が聞こえるだけ。
くらくらする。気持ち悪いし、頭は満足に働かない。だけど、ここで突っ立ってるワケにもいかない。今の柚陽の話は、一応港たちに伝えておかなくては。
メール画面を開きつつ、ついに糸が切れたのか、陸斗はその場に座り込んだ。
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