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 (みなと)波流希(はるき)かもしれないと考えて、すぐに「多分ありえないっすね」否定する。  彼等は海里(かいり)についているし、もし陸斗(りくと)の様子を見に来るにしても、連絡を入れないって事は考えられないし。  緊張で口の中が一気に乾く。  心臓は嫌な跳ね方をしたっきり、ドキドキとうるさい。  震える手で、ケータイを、すぐに連絡が出来るように握り込む。強く握り過ぎたか、ミシッと短い抗議の音が上がったけれど、それには無視。  相手が柚陽(ゆずひ)だったら。なにか企んでのことだったら。そう思いながらスコープを覗けば。 「……誰、っすか?」  マイク越しではないから相手に届く筈もなく。純粋な疑問として、思わずぽつりと呟いていた。  扉の前には、見慣れない姿が1人。友人達の顔を念のため改めて思い返してみるけれど、やっぱり見た事がない。間違ってるんだろうか。それとも海里の友人だろうか。  念のため、警戒はしつつ、扉を半分だけ開く。スコープ越しに見た時は、どこかビクビクと怯えていた訪問者の顔が、少しだけほっとしている。  悪意はなさそうだけど、見ず知らずの人間相手を快く迎える様な余裕も無ければ、そんな状況でもない。失礼は承知で相手が入ってこられない程度の扉の開け方で、 「えっと、どちらさま、っすか?」  さっきの呟きを少し丁寧にして、問い掛ける。「あ」と安心していた顔は、なにかに気付いたように目を見開いて、慌てて頭を下げた。 「突然ごめんなさい! 連絡するべきでしたが、連絡先が分からなくて……」 「……いや、なんかそれ以前に色々問題がある気もするっすけど。取り敢えず、頭上げて」 「はい……」  頭を下げさせたいワケじゃないから、そう促す。改めて顔を見ても、やっぱり知らない人なんすけど。  でも、なんか、この雰囲気を知っているような、そんな気もした。

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