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確かに、陸斗 と海里 がきちんと別れ話をしたかと聞かれれば、肯定はできない。でも、あんだけの事して「恋人同士」なんて言えるほど、オレは図々しくも図太くも出来てねぇっす。
それについて、紗夏 には、いくら言っても無駄だというのは、この短時間で分かったけれど。恋愛観もそれぞれなら、別れた基準もそれぞれ、なのだろうか。
「なんかオレの事誤解しているみたいですけど。陸斗さん達が付き合ってると言ってる理由、別れを告げてないから、というのもありますけど、それだけじゃないですからね? まず、オレは柚くんが好きなんです。強力なライバルはいない方が良い。……まあ本命と代用品じゃ、全然違いますけど。もう1つは、こっちが大きな理由なんですけど」
紗夏が1度言葉を切って、陸斗を見つめる。
また地雷を踏まれるんだろうな、ぼんやりと思って、覚悟もする。だからって痛みや衝撃は避けられないし、オレはそれを避ける気なんてないっすけど。
与えられる痛みも、潰される罪悪感も、全て陸斗にとっては償いだ。償えるなんて思ってない。それでも、甘んじて受けるべき罰だ。
果たして、紗夏は、
「陸斗さんは海里さんを大切に想っている。柚くんから守ろうとしてますし。海里さんも、陸斗さんの幸せを願ってる。これって、打算だけで付き合ってる恋人同士より、よっぽどお付き合いしてるように見えます」
微笑んで、穏やかに、陸斗の地雷を踏み抜いた。
痛くて、苦しくて。気を抜けば泣いてしまいそうだけれど、泣くワケにはいかないと強く拳を握りしめる。
オレはこの手で、海里が願ってくれた幸せを壊してしまったのに。
何度目かの、そしてきっと終わることの無い後悔に襲われる陸斗の手を、紗夏の片手がそっと触れた。包帯がない方の手だ。
罪悪感に苛まれる中でも、紗夏の行動には驚いて思わず目を見開く。紗夏は咎めるように陸斗を見ていた。
「ダメですよ。傷は愛しい人から与えられるべきです。せめて、愛ゆえに愛する人の関係者から。つまりは、陸斗さんの場合、海里さんや港 さん達ですね。彼等はそんな事、しなさそうですけど」
……だいぶズレてる。
だけど、コレは紗夏なりに励ましてくれているという事なのだろうか。一応はと「……ありがと」小声で呟いた礼には、「どういたしまして」微笑んで返して、紗夏は自分の手を引っ込めた。
それから、また、にこりと微笑む。
「では、改めて陸斗さん。オレは守るのに協力しますので、どうかオレの恋を応援してくれませんか?」
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