連絡先を交換して、念のため本人にも許可を取ってから港(みなと)たちにも報告しておく。やっぱり普段以上にこっちを気にしてるのか、返信はいつも以上に早い。「まあアイツなら大丈夫だろうけど油断はすんなよ」そんな警告で、港からの返信は締められていた。 「港さん、オレを過信するな、って言ったでしょ？」 「う」 　微笑んで断言されたのもあって、誤魔化す暇もなく思わず、そんな間抜けな声を漏らしてしまう。ここからじゃ、どんな繕い方も出来ないだろう。 　誤魔化すのを諦めて、陸斗(りくと)は小さく頷いて「ごめんね」苦笑を浮かべて謝る。 　こっちにはこっちの事情もある、とは言いたいけど、紗夏には紗夏の事情もあるワケで。自分の腕の傷さえも差し出すと条件の皿に上げた紗夏相手に、ここまで疑うのは申し訳ないと思ってしまう、けど。 　そんな陸斗の葛藤さえ見透かしているのか、「でも、それで良いんですよ」紗夏は言葉を探して黙り込んだ陸斗に、微笑んだ。 　自分の、包帯を巻いた腕に、やさしく触れる。腕を見る目はやさしそうで、だけどそれでいて寂しそうにも見える。資格がなくたって、自業自得だって、柚陽(ゆずひ)への恨みが消えたワケではない。そんな陸斗の目にも、紗夏の顔には胸を締め付けられた。 「海里(かいり)さんのために陸斗さんが警戒するっていうのは、もっともです。いくらオレが大切なものをいくつも天秤に乗せたからって、隙あらば裏切ろうとしてる、柚くんの心を掴んで離さない海里さんを葬ろうとしてる、それくらいには疑って良いですよ」 「……ごめんね」 　「さすがにソコまでは疑えないっすよ」とは、言えなかった。柚陽の件があればなおさら、疑って疑いすぎなんてないんだろうと思ってしまう。 　なんせ交換条件の結果がアレだったんだから。 　思い出して、その悔しさにグッと唇を噛み締める。「だから、陸斗さん？」小さな子供のイタズラを言い聞かせるような紗夏の声に、慌てて噛むのは止めた。 「気にしないでください。これはこれで愛なんだって、オレはちゃんと分かってますから」 　紗夏は微笑んでそう言いつつ、少し寂しそうに目を伏せた。